絵付けをするときなどに使われるベンガラとは、酸化鉄のことを言います。弁柄や紅殻とも書き、由来はインドのベンガル地方から伝来したことからそのように呼ばれています。焼きものの釉薬、主に天目釉や柿釉、飴釉などの茶褐色から黒色の釉には殆ど使われています。また、柿右衛門などの上絵付けの美しい赤はこの弁柄を細かく擦ることで得られます。ベンガラ色は暮らしの中に身近にあり、神社仏閣の彩色や化粧品、常滑の急須の土もベンガラで色付けされています。ベンガラの特性は、着色力、耐熱性、耐水性、耐光性、耐酸性、耐アルカリ性のいずれにも優れており、安価かつ無毒で人体にも安全なため、昔から幅広い用途で使用されてきました。岡山県の吹屋地区は、かつて日本のベンガラの巨大産地として繁栄し、今でもベンガラ漆喰壁の集落が残っています。