釉薬をかける前の素焼きした器の表面に下絵の具という顔料で絵付けすることを『下絵付け』(したえつけ)といいます。絵付けした後に釉薬をかけて本焼きをして完成になります。釉薬の下に絵があるので下絵付けと呼ばれるのです。この下絵に使われる顔料は本焼きの高温に耐え、鮮やかに発色する顔料(金属からできる)しか使えないので色数が少なく、昔は酸化鉄によって茶色に発色する『弁柄』や『鬼板』と酸化コバルトによって発色する『呉須』(ゴス)しかありませんでした。現在はバリエーションに富んだ色も数多くなりましたが、この弁柄と呉須は昔からある下絵付けの主役といえるでしょう。弁柄で描いたものは『鉄絵』と呼ばれ、唐津や織部などにみられる、おおらかな筆運びの絵付けによく見られます。呉須で描かれたものを、日本では『染付』、英語では『ブルーアンドホワイト』、中国では『青花』と呼ばれ、下絵付けの代表的な名称にもなっています。この器の画像の青はすべて呉須ですが、真ん中の赤の花の絵は上絵付け(うわえつけ)です。こんぺい陶の呉須には、焼きぬき呉須、青呉須、古代呉須、墨呉須、茶呉須と5種類あり、鮮やかなものから渋い色まで、色が微妙に違います。色の違いはコバルト以外の酸化金属の含有量や発色の違いです。
弁柄と呉須の見本です。酸化と還元どちらで焼くのか、濃度をどのくらいにするのかによっても色は変わってきます。ですからいつも同じ色を出すのは至難のワザ、と言えますね!